2018春季生活闘争方針 
   2018春季生活闘争で労働組合がベアの継続を求め5年目を迎える。三重一般同盟はデフレ経済のなか低下を続けた賃金水準の底上げと拡大を続ける大手企業との格差是正のため、大幅な賃上げを求め積極的な闘争を展開してきた。しかし、消費税増税や円安による物価上昇、年々引き上げられる社会保険料など家計の負担が増加し、労働者にとって実感できる賃上げを獲得するまでには至らなかった。
 2018春季生活闘争では、労働者が将来への不安を払拭し、安心して暮らしていける社会を実現するため、賃上げの継続はもとより大幅な賃上げの獲得と格差是正にこだわった闘争を展開したい。
 
1.春季生活闘争を取り巻く状況

(1)経済情勢
 アベノミクスによる金融緩和から円安基調に転換した日本経済は緩やかな景気回復を続け、いざなぎ景気を超える戦後2番目の景気拡大となっているが景気回復の実感はない。世界経済においても緩やかな成長を続け2016年後半から続く円安により大手企業業績が拡大するなか、上場企業の連結純益が2017年9月期中間決算で過去最高を更新する見通しとなり、2018年3月期決算でも過去最高を更新することが見込まれる。また、有効求人倍率は1.5倍を超え、完全失業率も3.0 %を切りほぼ完全雇用に近く、労働需給が引き締まり「人への投資」の一環として賃上げが必要となる環境になりつつある。しかし、世界的にはアメリカのFRBの利上げやトランプ大統領の政権運営、中国経済への不安、北朝鮮や中東の地政学的リスクなどの先行きへの不安材料もあり注意が必要である。
@国内総生産(GDP)
 実質GDP成長率は2017年7〜9月期で実質0.6%、年率換算で2.5%となった。12月の政府経済見通しでは、実質GDP成長率の見通しを2017年度年間で1.9%程度、2018年度を1.8%程度としており、日本銀行は「経 済・物価情勢の展望」で2018年度見通しを1.4%、同じく民間調査機関予測の平均では1.2%となっている。
A消費者物価指数
 11月総合で前年同月比0.6%、2015年を100として100.9となり2017年1月上昇に転じてからプラス圏で推移している。12月の政府経済見通しでは消費者物価指数総合で2017年度が0.7%程度、2018年度で1.1%程度となっており、日本銀行の見通しが2017年度0.8%、2018年度1.4%、民間調査機関予測の平均では2017年度0.6%、2018年度0.9%の見通しとなっている。
B消費支出(個人消費)
 総務省の家計調査によると11月の消費支出(二人以上の世帯)は前年同月に比べ実質で1.7%となり2ヶ月ぶりに増加した。しかし、2016年の年平均は前年比実質で▲1.7%となり、2014年▲2.9%、2015年▲2.3 %に続き3年連続の減少となっている。
C為 替
 アメリカ経済が緩やかではあるが確実な景気回復を続けるなか小幅ながら利上げを継続しており、2017年4月から12月までのドル円相場の月平均は110円から113円のレンジで推移した。しかし、EU経済は景気回復基調にあるがイギリスのEU離脱交渉の進展具合に不安があり、アメリカ大統領の政策・政権への不安、北朝鮮や中東における地政学的リスクなどによる急激な円高リスクが懸念され、今後も為替の変動に注視が必要である。

(2)賃金動向
 毎月勤労統計調査によると労働者の賃金(一人平均)は11月の現金給与総額が前年同月比0.9%増(4ヶ月連続増加)となった。うち所定内給与は0.4%増(8ヶ月連続増加)、所定外給与は2.6%増となっている。また、一般労働者では現金給与総額が前年同月比0.7%増となり所定内給与が0.1%増、所定外給与が2.6%増となった。
 実質賃金は11月前年同月比0.1%増となったものの2017年10月までは0%を含むマイナス圏内で推移している。
 2017年も健康保険料や年金保険料などが引き上げられ、国民一人一人の負担が増え、賃上げの多くは負担増と相殺された形で、賃上げがあったにも関わらず可処分所得が増加していない。総務省の「家計調査」による可処分所得を年度毎に見ると前年比実質で2013年▲1.3%、2014年▲2.9%、2015年▲0.1 %と減少を続けていたが2016年は0.4%と増加に転じたものの小幅なものとなっている。また、2017年1〜3月期、4〜6月期は前年同期比がマイナス圏内で推移していたが7〜9月期は2.7%増となっている。

(3)雇用動向
 雇用動向は完全失業率が2015年3月以降、3%台前半で推移しており、2017年11月には2.7%で24年ぶりの低さとなり完全雇用状態である3%を下回る状況が続いている。
 有効求人倍率は2017年11月に1.56倍に達し、43年10ヶ月ぶりの高水準を記録し、正規社員については1.13倍となり正規社員の求人数の増加が続いている。また、三重県では11月に1.69倍となり全国平均を超えている。

(4)企業業績
 企業業績を見ると上場企業の企業収益は9月期中間決算で過去最高を更新する見通しとなり、2018年3月期決算でも過去最高を更新する見込みである。
 2016年度法人企業統計調査によると企業の収益を示す経常利益は前年に比べ 9.9%増加し(前年度は5.6%増)、引き続き企業業績の拡大を示している。 また、2016年企業の内部留保(利益剰余金)は406兆円で前年から約28兆 円増加した。企業規模の増加率からみても資本金10億円以上の企業が7.6%(前年度6.9%)、1億円〜10億円で5.9%(同2.6%)、1千万円〜1億円は 5.6%(同10.8%)となり、引き続き大企業から中小企業まで内部留保が増加している。経営者は景気の先行きへの不安から企業防衛を優先するデフレマインドから脱却できず、企業収益拡大による内部留保の増加分は預貯金をはじめとする金融資産や負債の圧縮に回り、人件費抑制や設備投資抑制などの姿勢を続けている。
(5)中小企業の状況
 日銀短観によると中小企業の業況判断は12月調査で「良い%」−「悪い%」が11となり前期に比べ+5と改善が見られる。しかし、先行きに対しては▲4となっていることから経営者は引き続き慎重な見方をしている。雇用人員判断では「過剰%」 −「不足%」が▲34、先行き▲39となり中小企業での人材不足の度合いが深まる一方となっており、労働力確保をせまられる企業運営への影響が懸念される。 また、2016年からの原油の値上がりに伴う燃料費や電気代などのエネルギー関連費用の増加が中小企業の業績に与える影響にも注意していく必要がある。
 日本経済全体が緩やかながら景気回復を続けるなか、2016年法人企業統計を見ると中小企業(資本金1億円未満)の経常利益は前年に比べ17.3%増加し、利益剰余金も5.6%増加するなど大企業だけではなく中小企業にも賃上げに対する余力ができてきたと見るべきである。また、政策・制度では従来からの「所得拡大促進税制」が一層拡充され、賃上げに積極的な企業に対し実行税率を引き下げるなど優遇措置をとるとともに、人材育成やIoTなどへの投資に積極的な企業にも税制面での優遇措置がとられる予定となっている。会社に対し政策・制度の積極的な活用を求め、賃上げにつなげていく必要がある。


2.春季生活闘争に対応する労働界の動向

(1)連合方針
 連合は2018春季生活闘争方針で前年と同様、すべての労働組合は月例賃金にこだわり賃金の引き上げを目指すとして賃金改定分(ベースアップ)の要求水準は2%程度を基準とし、賃金カーブ維持相当分定昇相当分(賃金カーブ維持相当分) を含め4%程度とするとしている。併せて、2017春季生活闘争において中小組合の賃上げに効果のあった「大手追従・準拠などの構造を転換する運動」の継続的な取り組みと「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組みが必要で あるとしている。

(2)大手産別の要求基準状況
 春季生活闘争を牽引すべき自動車、電機などが加盟する金属労協(JCM)が前年と変わらず要求基準を「3000円以上の賃上げ」とすることを決めたが、個人消費拡大から景気回復のため大幅な賃上げが社会的要請であるなか、賃上げを求めるべき労働組合の要求水準が上がっていない。好調な企業業績や良好な労働需給、緩やかではあるが物価上昇など大幅な賃上げを求めるべき環境であるなか、労働組合は長く続いたデフレ経済で下がり続けた賃金水準の底上げを求め、積極的に賃上げを要求すべき時である。労働組合の要求水準が低いままでは実際の賃上げが大幅に上昇することは期待できない。特に春季生活闘争における相場形成に主導的な役割を果たすべき金属労協の要求水準が昨年並みでは、2018春季生活闘争全体の交渉に大きな影響を与えることが懸念される。中小企業労働組合に対しては「大手追従・準拠などの構造を転換」への取り組み継続や「付加価値の適正循環」の構築に取り組み、「格差是正」や「人への投資」を求め中小企業労働者の賃金水準の底上げ、格差是正を目指すとしている。労働組合は長年続いたデフレ経済のなか雇用確保のため定期昇給のみの要求を続けてきたものわかりの良い労働組合から労働者の生活安定・向上を求め労働者の立場に立った積極的な労働組合に転換すべきである。
産別の要求方針(案)は次のとおりである。
名  称 2 0 1 8 要 求 方 針 (案)
電機連合
自動車総連
JAM
UAゼンセン
 ベア  3,000円以上(統一)
 ベア  3,000円以上(統一)
 ベア  6,000円以上
 ベア  2.0%相当


3.春季生活闘争の基本課題
(1)賃金の底上げと格差是正
 2017春季生活闘争の結果は、連合集計(定昇込み賃上げ)において全体で1.98%(前年比▲0.02%)、5,712円(同▲67円)となっている。これを企業規模別で見ると300人以上で1.99%(同▲0.04%)、5,909 円(同▲109円)、300人未満では1.87%(同0.06%)、4,490 円(同150円)となった。
 賃金水準の「底上げ・底支え」と「格差是正」を目指した2017春季生活闘争において、全体では前年実績を下回ったものの300人未満の中小組合では前年同 時期を上回る結果を出した。しかし、労働者が実感できる賃上げにはほど遠い結果であった。
 2017年春闘において4年連続で賃上げを獲得したが、賃上げ幅は小さく消費税増税から4年が経過しても賃上げが追いつかず実質賃金を押し上げるには至らず横ばい状態を続け、社会保険料や所得税の引き上げにより実質可処分所得も増えず賃金上昇が実感できない。景気回復、賃金上昇の実感がないなか勤労者世帯の消費支出は減少が続き生活防衛や将来への不安が節約指向を一層深めている。こうした情勢のなか企業に長く続いたデフレマインドから脱却を求め、労働者の生活向上はもちろん、将来への不安を払拭し、がんばって働く優秀な人材を会社につなぎとめ、人材を確保するため大幅な賃上げを求める。また、企業の継続と成長のため労使で協力して生産性向上を達成し、適正な配分(賃上げ)を求めたい。
 特に、中小企業と大企業の賃金や一時金、その他労働条件や労働環境の格差は年々拡大している。同じ労働者としてこの格差は容認できるものではなく格差是正に強力に取り組みたい。また、この格差是正は今後予想される少子化社会のなか働き方改革を実行するため人材確保に大きな力となる。
 力強い日本経済と実感できる景気回復を実現するためには大幅な賃上げによる個人消費拡大や設備投資が不可欠であり内需を中心とした経済成長を目指さなければならない。
 初任給についても賃金構造の基本として一定の上昇を求めていくことで賃金全体の底上げを図りたい。 
 一時金では、企業は将来の固定費増加としての性格が強い賃上げを避け、対象期間の業績の結果として一時金で年間所得の維持・向上をしたがる傾向にある。生産性向上による付加価値増加分の対価として、あくまでも月例賃金の引き上げにこだわった姿勢を貫いていく。
 春季生活闘争をはじめとする経済闘争において、基本給を基準として要求や団体交渉をおこなってきた組合においては、賃金の上げ幅や一時金の月数が過大に評価され、平均賃金が低く評価されるなど基準内賃金での交渉と比べ賃上げ額や一時金の実額が低く抑えられる傾向が見られる。そこで従来から基本給を基準としていた組合に対し、「基準内賃金」を基本とした要求や交渉への転換を強く求めたい。

(2)中小企業の賃上げで個人消費拡大
 日本経済が緩やかな経済成長を続け、個人消費が緩やかに持ち直しつつある現在、実感できる景気回復を達成するためにはGDPの6割を占める個人消費の拡大がなくてはならない。しかし、労働者の約70%を占める中小企業の多くでは賃上げ水準が低く、中には先行きへの不安や脆弱な企業体力強化を理由に賃上げに消極的な中小企業もあり消費拡大につながっていない。今春季生活闘争では個人消費への影響が大きい中小企業労働者の賃上げを確保・継続することはもちろん、所得水準が低く抑えられてきた中小企業労働者の大幅な賃上げを獲得することで賃金水準の底上げ、格差是正から将来への安心や生活向上、消費マインドの改善につなげたい。

(3)定期昇給分の確保と定昇制度の確立
 中小企業の賃上げが少なく、かつ賃金カーブが低く抑えられているのは、定期昇給額が大企業より低いことが最大の原因といえる。特に中小企業では賃上げ交渉の基礎となる定昇分を低く設定する傾向にある。そのため1年1歳の賃金差が極端に低く抑えられている状況は、経験や能力向上分、企業への貢献度がまったく評価されていないと同然である。大企業の定期昇給分が約2%あることを考慮すると、定期昇給制度の有無に関わらず定期昇給分(賃金維持)として2%以上を確保した上で賃上げや格差是正を求めていく。
 また、定期昇給分が確保され要求・交渉でベアに集中することができる定期昇給制度の整備や制度化を求めていきたい。


(4)ワークライフバランスの実現に向けて
 @労働時間短縮 
 三重一般同盟はワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現に向け労働時間短縮を重点課題として取り組んできたが改善が見られず、引き続き次の課題に積極的に取り組まなければならない。
[長時間労働の抑制]
 時間外労働時間の短縮
 サービス残業の撲滅
 労働時間関係法令の遵守の徹底
 36協定で定める延長時間や特別条項による上限時間の点検
[総労働時間の縮減]
 所定内労働時間の短縮
 年間休日の見直し
 年次有給休暇の取得促進
 ワークライフバランスを実現するためには、労働組合から企業へ積極的な取り組みを求め、あくまでも労使の話し合いにより生産性向上と併せて効果的な進め方を選択し改善していく事が重要である。
 A仕事と家庭の両立
 出産・子育てや介護のため退職することなく仕事と家庭を両立しながら働き続けられる職場の実現にむけ、両立のための柔軟な働き方ができる環境や制度の整備、職場風土づくりが必要である。
 「改正育児・介護休業法」をはじめとする両立支援制度を充実し、周知や利用促進、取得しやすい職場環境の整備に取り組むとともに、労働協約や就業規則を整備していない組合については早急に整備に取り組む。


4.春季生活闘争の要求基準
 2018春季生活闘争においてわれわれ中小企業労働者の生活水準の維持・向上と拡がり続ける大企業との格差是正を求め、同時に消費拡大による景気回復のためにも、積極的に大幅な賃上げの要求を避けられない。
(1)賃上げの基準
 2018年も引き続き賃上げの継続が求められるなか、月例賃金の引き上げにこ だわり賃金水準の底上げと格差是正を積極的に求める要求としたい。特に格差是正を求めるため、昨年と同様「金額での要求」とする。
 要求基準を、すべての組合で、13,000円以上(組合員平均) とする。

(2)初任給要求
 賃金の底上げをはかるためには、初任給の引き上げが必須である。本年春季生活闘争では社会水準を確保し基準内賃金の2%程度の引き上げを目指す。
本年春季生活闘争では社会水準を確保し基準内賃金の2%程度の引き上げを目指す。
[参考] 連 合 18歳高卒初任給 参考目標値 172,500円
  経団連 18歳高卒初任給 2016年実績 167,259円
    22歳大卒初任給   212,824円

(3)一時金要求基準
 年収確保の観点から一時金の要求基準は例年を踏襲し基準内賃金で年間5ヶ月以上(金額で1,500,000円以上)を基準としたい。しかし、昨年に要求基準以上の一時金を獲得している組合は実績を踏襲して決定する。

(4)ワークライフバランスの同時要求事項
 労使が協議するうえで労働時間や労働条件と賃金は密接に関連していることから、今春季生活闘争のなかで労働時間短縮をはじめとする働き方改革に関する課題について加盟組合の実態に合わせた形で同時要求をする。特に重点課題である長時間労働の抑制と総労働時間の縮減について全加盟組合で積極的に取り組む。


5.闘争の体制


(1)賃闘委員会の設置
 執行委員会で構成する三重一般同盟賃闘委員会を第45回定期大会終了後、執行委員会で構成する三重一般同盟賃闘委員会を設置し、闘争の流れに応じてその都度具体策を設定し、加盟組合に指示するとともに、闘争全般の指導推進にあたる。

(2)闘争の推進
@賃闘オルグの実施
 賃闘に臨む情勢把握と方針の徹底をはかることを目的に、加盟組合執行部を対象とした「賃闘オルグ」を実施する。オルグは、三役を中心に編成し地区を分担して実施する。
A決起集会の開催
 賃闘の盛り上げをはかり全員参加で闘う体制を確立するため、全組合員の動員をおこない「春季生活闘争勝利決起集会」を加盟組合単位に開催する。
 開催時期はヤマ場が形成される時期などと連動できるように配慮し、賃闘委員会で決定する。また、連合三重の主催する「決起集会」にも積極参加する。
B賃闘情報の発行
 闘争状況の集約と伝達が速やかに実施できるよう「三重一般同盟2018春季生活闘争ニュース」を適宜発行する。

(3)定昇制度整備への支援

 定期昇給制度の整備や確立に対し、賃金制度・体系確立のための情報等の提供や支援を行う。

(4)闘争スケジュールの設定

 次のスケジュールに全加盟組合が歩調を合わせ統一闘争を推進する。
  ◎要求提出日  2月23日(金)まで
  ◎回答指定日  3月14日(水)
  ◎解決目標    3月26日(月)  ※3月中決着とする

 


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