2017春季生活闘争方針 
   2017春季生活闘争では労働組合がベア要求を復活し4年目を迎える。三重一般同盟は2014年からデフレ経済のなか低下を続けた賃金水準の底上げと拡大を続ける大手企業との格差是正のため大幅な賃上げを求め積極的な闘争を展開してきた。しかし、消費税増税や円安による物価上昇、年々増加する社会保険料の負担増など家計への負担増加のため、労働者にとって所得水準が上昇したことを実感できるだけの賃上げを獲得するまでには至らなかった。2017春季生活闘争では、労働者が将来への不安を払拭し、安心して暮らしていける社会を実現するため、賃上げの継続はもとより実感できる大幅な賃上げの獲得と格差是正にこだわった闘争を展開したい。
 
1.春季生活闘争を取り巻く状況

(1)経済情勢
 消費税増税から4年が経過し、増税直後の消費低迷からは脱したものの個人消費は伸びず景気回復への力強さが見えない。GDPは低成長を示し原油安の影響があったものの0%前後で推移する消費者物価指数を見てもデフレ脱却や景気回復にはほど遠い情勢が続いている。また、海外情勢では中国経済減速のリスクはもとより 次期アメリカ大統領トランプ氏の政策への不安やFRBの政策金利の引き上げ、 欧州での極右政党の台頭などの不確実な世界経済に注視する必要がある。
@国内総生産(GDP)
 実質GDP成長率が2016年7〜9月期で前期比0.3%で年率換算で1.3% となり4〜6月期(前期比0.2%)の成長率を上回った。12月の政府経済見通しでは、2017年度の実質GDP成長率の見通しを2016年度が1.3%程度、2017年度で1.5%程度としており、日本銀行は「経済・物価情勢の展望」で、2017年見通しを1.0%、同じく民間調査機関予測の平均は1.1%となっている。
A消費者物価指数
 11月総合で前年同月比0.5%、2015年を100とする100.4となり年度前半の下落傾向から上昇傾向に転じた可能性が高い。12月の政府経済見通しでは消費者物価指数総合で2016年度が0.0%、2017年度で1.1 %となっており、日本銀行が2016年度▲0.1%、2017年度見通し1.5 %、民間調査機関予測の平均は2016年度▲0.2%、2017年度見通し0.7%となっている。
B消費支出(個人消費)
 総務省の家計調査によると11月の消費支出(二人以上の世帯)は前年同月に比べ実質で▲1.5%となり9ヶ月連続で減少している。2013年以降の年平均を見ても前年比実質で2013年1.0%、2014年▲2.9%、2015年▲2.3%となっており、個人の消費支出は減少を続けている。
C為  替
 2016年前半はアメリカの景気減速感から利上げ見送りやイギリスのEU離脱、アメリカ大統領選挙結果への不安など世界経済への先行きへの不透明感が拡がり安全通貨である円への回避などで一時1ドル100円を割る勢いであったが、2016年終盤にはアメリカ新政権による内需拡大への期待が膨らみ、同時に景気回復や雇用の底堅さから利上げが決定され2017年に入り116円前後で推移している。しかし、次期大統領トランプ氏の政策に不透明な部分があることや、 欧州での極右政党の台頭など、今後の為替の変動に注視が必要である。
 

(2)賃金動向と雇用動向
 毎月勤労統計調査によると労働者の名目賃金は増加傾向にあり、実質賃金も10月前年同月比0.4%で7月の0.5%以降4カ月連続でプラス圏内で推移している。 しかし、健康保険料や年金保険料の引き上げなど国民一人一人の負担増が続いており、賃上げの多くは負担増と相殺され、賃上げがあったにも関わらず実際の家計の収入が増加していない。総務省の「家計調査」によると可処分所得は、2012年平均を100とすると、2014年平均で99.7、2015年が100.5となっており安倍政権発足以前の2012年から横ばい水準が続いている。
 雇用動向は完全失業率が2015年3月以降、3%台前半で推移しており、2016年11月には3.1%で完全失業者数は78ヶ月連続で減少している。
有効求人倍率は2016年11月に1.41倍に達し、最低の北海道と沖縄でも1.02倍となり全国で1.0倍を超えている。正規社員については0.9倍と1倍を切る状況にはあるが正規社員の求人数の増加が続いており、増加率で非正規労働者を上回っている。

(3)企業の内部留保
 法人企業統計調査によると2015年内部留保(利益剰余金)は377兆円で前年14年から約23.5兆円増加している。また、企業規模の増加率でみても資本金10億円以上の企業で6.9%(前年度8.4%)、1億円〜10億円で2.6%(同12.1%)、1千万円〜1億円が10.8%(同4%)となり、大企業から中小企業まで内部留保が増加した。内部留保の増加分は預貯金をはじめとする金融資産の増加や借入金返済による負債の圧縮に充てられており、景気の先行きへの不安から企業防衛を優先する多くの経営者はデフレマインドから脱却せず、人件費や設備投資抑制による利益確保を続けている。

(4)中小企業の状況
 中小企業の業況判断は12月の日銀短観によると「良い%」−「悪い%」が2と横ばいの状態が続いている。日本経済全体が景気回復に対して足踏み状態を続けるなか、政策金融公庫の中小企業への業況調査では弱い動きではあるが回復の動きが見え、先行きに対しても改善の兆しを見せているが、中小企業にとって業績を左右する燃料費や電気代などのエネルギー関連費用が2016年前期からの原油の値上がりに伴い増加し企業収益を押し下げる可能性がある。しかし、2015年法人企業統計を見ると中小企業(資本金1億円未満)の利益剰余金が前年に比べ10.8 %増加しているなど賃上げに対する余力がでてきたといえる。また、政策・制度では29年度税制改正により従来からの「所得拡大促進税制」が中小企業向けに拡充され、中小企業に対する法人税軽減の延長などの税額負担が軽減されている。政策・制度の積極的な活用を求め、賃上げにつなげていくことが必要である。
 多くの中小企業では、定期昇給制度はあるが定昇金額が大企業に比べ低く、賃上げが大企業水準を大きく下回る原因となっている。また、定期昇給制度自体がない企業については早急に定期昇給制度の確立が必要である。


2.春季生活闘争に対応する労働界の動向

(1)連合方針
 連合は前年と同様、すべての労働組合は月例賃金にこだわり賃金の引き上げを目指すとして賃上げ要求水準を「2%程度を基準」、賃金カーブ維持相当分(定昇相当分)を含めた4%程度を要求方針とし、賃金の上げ幅だけでなく「賃金水準の絶対値」にこだわる取り組みを進めるとしている。併せて、大手企業労働者と中小企 業労働者の賃金格差是正のため「大手追従・準拠などの構造を転換する運動」を前進させることを求めている。

(2)大手産別の要求基準状況
 今春季生活闘争において自動車や電機など大手労働組合を中心に構成する金属労協(JCM)は統一要求を3,000円以上として、昨年に引き続き連合要求の半分の要求方針を決定した。春季生活闘争における相場形成に主導的な役割を果たすべき金属労協の要求方針が、昨年並みであることから、続く中小企業労働組合の回答に大きな影響を与えることが懸念されることから、中小企業労働組合では大手追随・準拠の交渉と一線を画し、「格差是正」や「人材への投資」を求め中小企業労働者の賃金水準の底上げを目指したい。2016年度後半大手企業で円安による業績の上方修正が予想されるなか、日本を代表する大手組合が積極的に大幅な賃上げを求め春闘相場全体を押し上げることが本来の姿ではないか。
産別の要求方針(案)は次のとおりである。
名  称 2 0 1 7 要 求 方 針 (案)
電機連合
自動車総連
JAM
UAゼンセン
私鉄総連
 ベア  3,000円以上(統一)
 ベア  3,000円以上(統一)
 ベア  6,000円以上
 ベア  2%相当
 ベア  5,600円(2%相当)


3.春季生活闘争の基本課題
(1)賃金の底上げと格差是正
 2016春季生活闘争の結果は、連合集計(定昇込み)において全体で2.0%、5,779円となっている。これを企業規模別で見ると300人以上で2.03 %、6,018円、300人未満では1.81%、4,340円となった。
 賃金水準の底上げと格差是正を目指した春季生活闘争では、前年実績を下回り労働者が実感できる賃上げにはほど遠く、格差が拡大する結果となった。
 消費税増税後過去3年の賃上げの結果は到底納得できる水準ではなかった。消費税増税や円安による物価上昇で低下した実質賃金を押し上げるには力不足であり、 可処分所得が増えないなか大幅な賃上げの実現により賃金水準の底上げを図りたい。 また、大企業と中小企業の賃上げ格差は確実に拡がり続けていることから、格差是正分の上積みを積極的に求めていかなければならない。
 初任給についても賃金構造の基本として一定の上昇を求めていくことで賃金全体の底上げを図りたい。 
 一時金では、企業は将来の固定費増加としての性格が強い賃上げを避け、対象期間の業績の結果として一時金で年間所得の維持・向上をしたがる傾向にある。生産性向上による付加価値増加分の対価として、あくまでも月例賃金の引き上げにこだわった姿勢を貫いていく。
 春季生活闘争をはじめとする経済闘争において、基本給を基準として要求や団体交渉をおこなってきた組合においては、賃金の上げ幅や一時金の月数が過大に評価され、平均賃金が低く評価されるなど基準内賃金での交渉と比べ賃上げ額や一時金の実額が低く抑えられる傾向が見られる。そこで従来から基本給を基準としていた組合に対し、「基準内賃金」を基本とした要求や交渉への転換を強く求めたい。

(2)中小企業の賃上げで個人消費拡大
 個人消費が停滞し踊り場迎えている現在、景気回復のためにはGDPの6割を占める個人消費の拡大がなくてはならない。個人消費を押し上げるには継続的な賃上げによりデフレマインドを払拭し、将来への不安からくる貯蓄志向からの転換が必要である。なかでも労働者の約70%を占める中小企業の多くでは賃上げ水準が低く、賃金の引き上げがない中小企業もあり消費税増税や社会保険料の負担増が家計の大きな負担となっている。
 今春季生活闘争では消費を拡大させるために、個人消費への影響の大きい中小企業労働者の賃上げを確保・継続することはもちろん、所得水準が低く抑えられてきた中小企業労働者の大幅な賃上げを獲得することで賃金水準の底上げから将来への安心や生活向上、消費マインドを改善することにつなげたい。

(3)定期昇給分の確保と定昇制度の確立
 中小企業の賃上げが少なく、かつ賃金カーブが低く抑えられているのは、定期昇給額が大企業より低いことが最大の原因といえる。特に中小企業では賃上げ交渉の基礎となる定昇分を低く設定する傾向にある。そのため1年1歳の賃金差が極端に低く抑えられている状況は、経験や能力向上分、企業への貢献度がまったく評価されていないと同然である。大企業の定期昇給分が約2%あることを考慮すると、定期昇給制度の有無に関わらず定期昇給分(賃金維持)として1.5〜2%を確保した上で賃上げや格差是正を求めていく。
 また、同時要求として定期昇給分が確保され要求・交渉でベアに集中することができる定期昇給制度の整備や制度化を求めていきたい。


(4)ワークライフバランスの実現に向けて
 @労働時間短縮 
 三重一般同盟はワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現に向け労働時間短縮を重点課題として取り組んできたが改善が見られず、引き続き次の課題に積極的に取り組まなければならない。
 長時間労働の抑制
  時間外労働時間の短縮
  サービス残業の撲滅
  労働時間関係法令の遵守の徹底
 総労働時間の縮減
  所定内労働時間の短縮
  年間休日の見直し
  年次有給休暇の取得促進
 ワークライフバランスを実現するためには、労働組合から企業へ積極的な取り組みを求め、あくまでも労使の話し合いにより効果的な進め方を選択し改善していく事が重要である。労使が協議するうえで労働時間と賃金は密接に関係している点から、今春季生活闘争のなかで加盟組合の事情に合わせた形で労働時間短縮に関する内容を同時要求としたい。
 A仕事と家庭の両立
 出産・子育てや介護のため退職することなく仕事と家庭を両立しながら働き続けられる職場の実現にむけ、両立のための柔軟な働き方や利用しやすい環境の整備や職場風土づくりが必要である。
「改正育児・介護休業法」をはじめとする両立支援制度を充実し、周知や利用促進、取得しやすい職場環境の整備に取り組むとともに、労働協約や就業規則を整備していない組合については早急に整備に取り組む


4.春季生活闘争の要求基準
 2017春季生活闘争においてわれわれ中小企業労働者の生活水準の維持・向上と拡がり続ける大企業との格差是正を求め、同時に消費拡大による景気回復のためにも、積極的に大幅な賃上げの要求を避けられない。
(1)賃上げの基準
 2017年も引き続き賃上げの継続が求められるなか、月例賃金の引き上げにこだわり賃金水準の底上げと格差是正を積極的に求める要求としたい。特に格差是正を求めるため、昨年と同様「金額での要求」とする。
 要求基準をすべての組合で、12,500円以上(組合員平均) とする。

(2)初任給要求
 賃金の底上げをはかるためには、初任給の引き上げが必須である。
本年春季生活闘争では社会水準を確保し基準内賃金の2%程度の引き上げを目指す。
[参考] 連 合 18歳高卒初任給 参考目標値 170,100円
  経団連 18歳高卒初任給 2016年実績 167,722円
    22歳大卒初任給   213,785円

(3)一時金要求基準
 年収確保の観点から一時金の要求基準は例年を踏襲し基準内賃金で年間5ヶ月以上(金額で1,500,000円以上)を基準としたい。ただし、昨年に要求基準以上の一時金を獲得している組合は実績を踏襲して決定する。

(4)ワークライフバランスの同時要求
 労使が協議するうえで労働時間と賃金は密接に関係している点から、今春季生活闘争のなかで労働時間短縮に関する重点課題について加盟組合の実態に合わせた形で統一同時要求とし、長時間労働の抑制と総労働時間の縮減について全加盟組合で積極的に取り組む。


5.闘争の体制


(1)賃闘委員会の設置
 執行委員会で構成する三重一般同盟賃闘委員会を第44回定期大会終了後、直ちに設置し、闘争の流れに応じてその都度具体策を設定し、加盟組合に指示するとともに、闘争全般の指導推進にあたる。

(2)闘争の推進
@賃闘オルグの実施
 賃闘に臨む情勢把握と方針の徹底をはかることを目的に、加盟組合執行部を対象とした「賃闘オルグ」を実施する。オルグは、三役を中心に編成し地区を分担して実施する。
A決起集会の開催
 賃闘の盛り上げをはかり全員参加で闘う体制を確立するため、全組合員の動員をおこない「春季生活闘争勝利決起集会」を加盟組合単位に開催する。
 開催時期はヤマ場が形成される時期などと連動できるように配慮し、賃闘委員会で決定する。また、連合三重の主催する「決起集会」にも積極参加する。
B賃闘情報の発行
 闘争状況の集約と伝達が速やかに実施できるよう「三重一般同盟2017春季生活闘争ニュース」を適宜発行する。

(3)定昇制度確立への支援

 定期昇給制度の整備や確立に対し、賃金制度・体系確立のための情報等の提供や支援を行う。

(4)闘争スケジュールの設定

 次のスケジュールに全加盟組合が歩調を合わせ統一闘争を推進する。
  ◎要求提出日  2月24日(金)まで
  ◎回答指定日  3月15日(水)
  ◎解決目標    3月27日(月)  ※3月中決着とする

 


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